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#010

石川県九谷焼絵付師
林 美佳里

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九谷焼絵付師 
林 美佳里

Hayashi Mikari
1985年 石川県生まれ

幼い頃から絵を描くことが大好きで「ずっと絵を描いていたい」との想いから、高校卒業後、九谷焼技術研修所に入所。

九谷焼に関する知識と技術を学ぶ中で絵付の技法の一つである「 赤絵細描 あかえさいびょう 」と出会い、魅了される。

3年間の研修の後、「赤絵細描」の第一人者である福島武山さんに弟子入り。

以来、師匠を目標に、技術と感性を磨く日々を送っている。

石川県能美市佐野町。
日本を代表する工芸品「九谷焼」の名工、福島 武山さんの工房が今回の舞台。

林 美佳里さん インタビュー
赤絵細描に興味を抱いたきっかけは?

赤絵細描は、焼き物の白い素地を、小さな紋様で埋め尽くしていくところが面白いと思いました。

紋様がより小さく、線が細くなればなるほど「とことんやってやろう」という気持ちになってきます。

そして、この仕事をやっていて楽しい時は、作品を見た人の反応を見るときですかね。

完成した作品の紋様の細かさを見た人が、驚いてくれた時は、「よし!」と思います。

赤描きの工程。
筆運びや力加減の微妙な調整が難しく、直線を引くことさえまだ思い通りにいかないという。

今後の目標は?

私はまだ人物を描くことができないので、師匠のような人物柄を描けるようになることが目標です。

師匠の描く人物柄には、生身の人間の温かみがあるんですよね。

まるで生きて動いているように見えます。

その人が何を思い、何をしようとしているのかさえも分かるんですよ。

どうやったらそのように描けるのか…まだまだ師匠は遠い存在ですね。

 

林 美佳里さん
弟子
林 美佳里さん
福島 武山さん
師匠
福島 武山さん

師匠
福島 武山さん インタビュー

林さんの印象は?

私はこの仕事をやるのに、素質は50%くらいでいいと見ているんです。あとは本人の努力。

林さんの一番の魅力は真面目さ。真面目に素直にやってくれるから、教える方も力が入りますね。努力に引っ張られて素質も少しずつ伸びてきています。

技術の上達に必要なことは、とにかく描き続けること。例えば、若い人が人物を描いても、どうしても硬い表情になる。最初から上手くなんて描けないんです。けど、その段階を経なければ、味わいが出てくることはありません。

今は、失敗を繰り返し、笑われてもいいから、ひたすら描き続けるしか腕を上げる方法はありません。

今の林さんは、自分の中に新しいスタイルができつつある段階です。本当に大変なのはこれから。経験を積み重ねてもっともっと良い具合になってもらえればと思います。

取材を終えて

師匠・福島 武山さんの作業場に通いながら修業をしている林さん。

福島さんに弟子入りしたのは、「その人柄に惹かれたから」そう話していました。

「赤絵細描と言えば福島 武山」と称されるほどの偉大な職人、どのような方なのか…。

実際にお会いすると、その技術の驚かされることはもちろん、林さんの言う通り、とても柔和なお人柄で、振る舞いや言葉遣いから、懐の深さ、弟子たちへの深い愛情を垣間見ることができました。

林さんは「師匠のような職人になりたい」、そう言いました。まさに理想の師弟関係を見た今回の取材でした。

九谷焼

九谷焼くたにやき

17世紀中頃に加賀藩・九谷村で作られ始めた、華やかな絵柄が特徴の色絵磁器。

しかし、半世紀を過ぎた頃にこつぜんと姿を消す。

当時の作品は「 古九谷 こくたに 」と呼ばれ、現在では値がつけられないほどの稀少価値を誇る。

そこから120年後、再び窯が開かれると様々な技法や画風が誕生し、今日も伝統を受け継ぎながら常に新たな作風が生まれ続けている。