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#016

栃木県日光東照宮修復・
漆塗職人
大森 憲志

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日光東照宮修復・漆塗職人 
大森 憲志

Omori Kenji
1986年 栃木県生まれ

大学在学中に漆と出会い、はじめはその光沢の美しさに魅了された。

特徴や効能など、漆について知れば知るほど、その奥深さに夢中になり、ためらうことなく文化財修復の「漆塗」の道に進むことを決意。

国宝の修復作業などを通して、日々漆塗技術に磨きをかけている。

 

世界遺産にも登録された日光東照宮。現在、平成の大修理の真っ最中。
そんな修復作業を担っているのが、「日光社寺文化財保存会」だ。

大森 憲志さん インタビュー
国宝を扱うことにプレッシャーはありますか?

好きで入ったこの世界です。漆を使って文化財をきれいに修復できるこの仕事にとてもやりがいを感じています。

もちろんプレッシャーもあります。でも、それは国宝だからというわけではありません。私達にとって、日光東照宮にあるものは国宝の部分以外も全てが同じ価値を持っています。どれもかけがえのない価値のある物だと思いながら仕事に臨んでいます。

400年もの間受け継がれてきた日光東照宮の文化財が、これからどうなっていくのかは、すべて私たち、修復に関わる人間の仕事次第ですからね。日本の宝を次の世代にきちんと継承していくためにも、常に愛情を持って文化財に接していくことを心がけています。

当たり前のことを当たり前にこなせる一人前の職人を目指して、精進していきたいです。

古い彫刻にとって「木割れ」は致命傷。
それを漆を塗り限りなく元の状態に近づける「刻苧こくそ作業」。
修復士にとって腕の見せ所だ。

漆塗部門 修復責任者
佐藤 則武さん
インタビュー

漆塗の作業で大事なことは何ですか?

私は漆塗の職人歴38年になりますが、日光東照宮の修復をするのは初めての経験です。

日光東照宮は、漆塗・彩色・錺金具などの外装に多くの技術が用いられた豪華壮麗な造りが特徴です。この精彩を維持するため、国家を挙げての造替・修復作業が継続して行われてきました。

2007年からは「平成の大修理」と題して、重要な主社殿の工事が順次、行われています。作業終了は、2024年の予定です。

作業自体は初めてですが、もちろん漆の先輩はいて、その人達から漆の塗り方は習いました。しかし、もっと大きい存在の師匠っていうのは、建物そのものに塗ってある塗膜です。400年前の木材などを見ると、その時々の修理の塗膜が残っていたりするんですね。こういうのを見て、昔の職人さんと会話しながら仕事をしていくというのが、すごく楽しいことですし、勉強にもなります。

職人の感性と国宝に対する思いやりを、自分の中にどれだけ持って仕事できるかが重要ですね。

大森 憲志さん
日光東照宮修復・漆塗職人
大森 憲志さん
佐藤 則武さん
漆塗部門 修復責任者
佐藤 則武さん

取材を終えて

熟練の職人に交じり、日々腕を磨いている大森さんが息抜きを兼ねて、仕事帰りに立ち寄るのが弓道場。

三段の腕前ですが、日によっては矢が狙い通りに飛ばないこともあるそうです。

そんな時は諦めずに、粘り強く矢を打ち続けるという大森さん。

仕事にも、弓道にも、真摯に取り組む姿勢がとても印象的でした。

日光東照宮 漆塗

日光東照宮修復・漆塗

江戸時代初期の建築・美術・工芸の粋を集めた建造物と称される「日光東照宮」。

その豪壮華麗な姿を維持するため、約50年に1度の割合で大規模な修復作業が行われており、2007年からは「平成の大修理」と称される修復作業を「公益財団法人・日光社寺文化財保存会」が一手に担い、進めている。

修復作業は「漆塗」と「彩色」の二つの部門に分かれ、それぞれを専門の職人が請け負う。

日光東照宮の建造物の表面には雨風に強く、防腐効果も高い漆が塗られている。それを塗り直し、表面を再び強固にすることが漆塗の役割である。