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#053

三重県伊勢型紙職人
那須 恵子

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伊勢型紙職人
那須 恵子

Nasu Keiko
1982年 岐阜県生まれ

高校はデザイン科に進み、卒業した後は印刷会社に就職、そこで雑誌の表紙デザインなどを手がける。

27歳の時、伊勢型紙と出会い、その魅力に惹かれ伊勢型紙職人になることを決意。

会社を退職し職人歴45年の伊勢型紙職人、生田嘉範氏の門を叩き、入門以後は伝統の技術を受け継ぐため、鍛錬の日々を送っている。

着物を彩る「小紋」と呼ばれる緻密な模様。
これらは型紙を用いた型染めによって生み出され、中でも最も多く使われているのが伊勢型紙である。

那須 恵子さん インタビュー
「伊勢型紙職人」になろうとした、きっかけは?

子供の頃から、工作や絵描きをするのが好きでした。自分の頭の中にあるものを形にして表現するのが楽しくて、時間が経つのも忘れ日々没頭していました。いつしか「将来は物づくりの仕事に就きたい」と思うようになっていました。

高校は芸術系の学校に進み、デザインを学びました。そして、卒業後は印刷会社に就職し、自分で作ったペーパーイラストで雑誌の表紙デザインなどを手がけていました。とてもやりがいのある仕事でしたが、だんだん「もっと自分の腕に技術を付けたい」と思うようになり、さまざまある日本の伝統工芸品を調べ、休みの日には各地の工芸品を見て廻りました。

その時、一番強く惹かれたのが、「伊勢型紙」だったんです。
型紙のことはあまり知りませんでしたが、調べていくうちに、型紙制作がいかに奥深い世界かが分かってきました。それまでたくさん紙に触れてきましたが、同じ紙なのに全く違う世界があることに感動したんです。型紙によってさまざまな型染めが行われ、伝統工芸品などが作られていく。「そんな型紙を自分も作りたい、伝統の技術を身に付けたい」と強く思うようになり、師匠の生田さんに弟子入りを願い出ました。

刃先に神経を集中させる。
わずか2mmしかない墨がついたところを掘り落としていく。

どんな「伊勢型紙職人」になりたいですか?

弟子入りから4年目になりますが、まだまだ手探りの状態です。

道具の使い方では思うようにいかないことも多く、自分の頭の中でイメージしている動きが手に伝わらないことがあります。

紙は貴重なものですから無駄にはできません。限られた作業の中で、しっかりと腕を磨いていきたいと思っています。

そして、いずれは師匠のように「那須さんが彫った型紙を使いたい」と言われるようになりたいですし、自分ならではの彫りができるように頑張っていきます。

那須 恵子さん
弟子
那須 恵子さん
師匠 生田 嘉範さん
師匠
生田 嘉範さん

師匠 生田 嘉範さん
インタビュー

那須さんは、どんな職人ですか?

入門した時から、変わることなく熱心に作業に取り組んでいて、日々進歩していると思います。「昨日はできなかったんですが、今日はできました!」ということがよくありますので。

そして、那須さんは、仕事は丁寧で覚えも早いので、できるだけ練習用ではなく商品を手がけてもらっています。実際にお客さんの手に渡るものを作ることで初めて本当の技術を得ると考えています。

職人の仕事に終わりはありません。私も日々勉強です。若い人から学ぶこともあります。

伝統的な技術をしっかりと習得した上で、那須さんならではの技を身に付け、そして磨いていって欲しいと思います。

取材を終えて

取材中、那須さんは、これまで取材してきた他の職人さんについて質問をしてきました。

内容は「同世代の職人さんはどんな考えを持っているのか、これからどうしたいのか」などさまざま。

その熱心な姿に、那須さんがひた向きに型紙作りに打ち込むのは、自分の技術習得だけではなく、優れた技術を次の世代に繋げたいという強い想いがあることを感じました。

今回、那須さんの型紙で染めの協力をいただいた石塚さんの娘さんも後継者を目指しており、初めて出会った若い二人はすぐに意気投合、互いの想いや夢を語り合っていました。生き生きとした二人の表情に、伝統が継がれていく様子を垣間見ることができました。

伊勢型紙

伊勢型紙

型紙とは友禅染や小紋などの型染めに用いる伝統的工芸品。

伊勢型紙は、三重県鈴鹿市の白子と寺家という極めて限られた地域で伝承され、千年以上の歴史がある。伊勢型紙は、薄い和紙を柿渋で数枚貼りあわせた地紙に職人により手彫りされる。

その高度な技術は江戸時代、紀州藩の手厚い保護をうけ発展し、現在でも型染めを行う職人の間では、「型紙といえば伊勢型紙」とも言われている。