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有田焼作家 
井上 祐希

Inoue Yuuki
1988年 佐賀県生まれ

日本における磁器発祥の地・有田町で、磁器製作の道に入って6年。
師匠は、祖父である重要無形文化財保持者・人間国宝の井上萬二氏と父・康徳氏。

〝究極の白磁美〟と称される萬二氏の卓越した白磁の技を受け継ぎながら新たな表現方法を探求し、ようやく自分らしさを表現できるようになってきた。

一つとして同じ形、模様がないオリジナリティ溢れる作品作りに取り組んでいる。

土がまとまったら、ろくろの上に載せ成形する。
中心がぶれると、薄くて繊細な白磁はすぐに崩れてしまう。

井上 祐希さん インタビュー
有田焼作家を継ぐことへの抵抗は?

ものづくりは好きだったので、継ぐことに抵抗はありませんでした。

幼稚園に行っている頃に祖父が人間国宝になったのですが、周りからは「継ぐんでしょ」とか「人間国宝になるんでしょ」と言われてきました。

周りからの期待に応えたい気持ちもあるのですが、祖父や父を意識しすぎると自分らしさが表現できなくなるので、あまり気にしないようにしています。

ようやく最近になって、自分が気に入った作品が作れるようになった気がします。

今は「僕の作品が見たい、欲しい」という人のために製作していますが、三代目で窯がつぶれてしまわないよう、たくさんのことをやらなければならないと思っています。

釉薬が乾いてから滴模様を入れる。
筆を使い、リズムを刻むように滴の模様を描く。

今後の目標は?

まじめに黙々とろくろの技術などを磨くのも大事ですが、やはり買ってもらわないと意味がないので、焼き物に興味がない人たちへのアプローチだったり、いろいろな人と会って話をして作品を見てもらったり、自分のことを知ってもらう仕事もしないといけない。焼き物に興味がある人の分母を少しでも増やすことが重要だと思っています。

今後、機械とかAIが発達して、自分の好きなものが簡単にできるようになっていくので、そうした世の中でも自分の作品を買ってもらうためには、自分自身が魅力的にならなければなりません。

「井上 祐希の作品だから買う」そう言ってくれたら嬉しいですね。

井上 祐希さん
弟子
井上 祐希さん
井上 萬二さん
師匠
井上 萬二さん

師匠
井上 萬二さん インタビュー

白磁を極めようと思ったのは?

元来有田焼は加飾をするのが一般的でした。土の中に含まれている不純物が焼いたときに出てきてしまうため、白一色だと目立ちます。そのため加飾が施されていたのです。

なぜ私が白磁に挑戦したかというと、やはり焼き物は形を生み出すのが原点だから。つまり、ろくろの技術を習得することが大切。その技術をもって〝究極の形〟を作ることができれば加飾はいらないんです。

作る技術があっても、創造するセンスがないとダメですし、センスがあっても技術がないとダメ。卓越した技術もセンスも持ち、その人が相まって陶芸作品は成り立っています。

私も先人から尊い技術を学びました。「伝統は常に新しくなければならない」。技術は正しく継承し、「今」の感覚をもって新たな手法を生み出していくことで自分の世界を作る。これが私たちの仕事です。

取材を終えて

人間国宝、しかも三代揃って創作をしている窯元。とても貴重な創作現場に立ち会うことができました。

面白いと思ったのは、萬二さん、二代目の康徳さん、三代目の祐希さんそれぞれが独自の世界観をお持ちで、それが作品に個性として現れていること。やはり作品は「その人そのもの」なのだと改めて感じました。

人間国宝の窯を受け継ぐ重みや〝伝統を守る〟ことの意味を、井上萬二窯での三人の仕事を拝見して知ることができた気がします。

柄

白磁はくじ

白磁は、白い陶石を原料とし、白い無地の下地に透明の釉薬をかけて作った磁器の総称。

約1300℃の高温で焼き上げ、ガラス質の透明感のある滑らかな質感を持つ。

1616年に有田の泉山で石英やセリサイドなどを主成分とした白磁に適した地層が発見された。

その泉山の陶石を使い白磁を焼成したのが、朝鮮半島から渡来し有田に移住していた陶工の李参平。

それ以降、白磁が盛んに作られるようになり、海外にも輸出されるようになった。

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