Sugiura Tetsuro
1981年 石川県生まれ
子どもの頃から物づくりが好きで、高校生になる頃には「職人」になりたいという夢を抱くようになっていた。
高校卒業後、創業400年の歴史を誇る和太鼓製造企業「浅野太鼓」に入社し、和太鼓職人への道を歩み始める。
以来、ひたむきに和太鼓製作に取り組み、優れた和太鼓職人になることを目指し、研鑽の日々を送っている。
自分自身、ものを作ることが好きで、職人という生き方には憧れを持っていましたので、「こういう仕事をしたいな」とはずっと思っていました。
とはいえ、太鼓と接点があったわけではありません。
敢えて、そういう自分の知らない世界に、怖いもの見たさで飛び込んでみようかな、と思ったのがこの道に進むきっかけです。
ただ、高校時代はバンドを組んでベースをやっていたりもしたので、音に対しての興味は以前から持っていましたね。
入社後二年間は、木を刳り抜く工程を担当し、その後、革張りの工程を担当しています。
革張りで難しいことは、天然の素材を扱っているところですかね。
機械で作った材料ではなく、自然のものを扱うので一つひとつに個性があります。ですから、作業に取り掛かる前に、サイズや厚みなどがそれぞれ合っているか見極めなければいけません。季節や使う地域によっても音は異なるし、祭りや演奏など用途によっても求められるものが違います。そういったことも考え合わせ、音を確かめながら革を張る必要があります。
たとえ自分が「これは大丈夫」と思っても、ダメなものもありますし、そういったこと全てが難しくて、奥深いですね。
最初は3ヵ月間だけ、様子を見させてもらったんですね。その中で、寡黙だけど、コツコツやるタイプだなと感じました。横の人とおしゃべりもしないし、これならもの作りに合う、と思って採用したんです。
今後は、一つひとつのものを作品と考えて作っていって欲しいですね。私達は、自分達が作っているものは全て、「消耗品ではなく残るものだ」と思って取り組んでいるんです。
ですから、目先のことだけを考えていてはダメです。自分が作ったものが、全国各地で長きに渡って残っていくということを肝に銘じて、先々を考えた仕事をしていって欲しいですね。
創業400年という長い歴史を持つ老舗「株式会社 浅野太鼓楽器店」。
優れた職人たちによってその伝統と技術は守られ、受け継がれてきた。
杉浦さんはそれをとても誇りに思っている。そして私たちに「もっともっと腕を磨いて、育ててもらった会社に恩返ししたい」と話しました。
寡黙ながらも情熱を内に秘めた熱い人、そう感じました。
作業中の真剣なまなざし。決して妥協を許さない姿勢が、伝統と技術を次代に繋いでいく。杉浦さんの手掛けた太鼓の音色が、これからも響き渡ることを願っています。
和太鼓は、古来より神事や祭礼において、また伝達手段として重要な役割を担う道具として伝えられてきたが、最近では伝承、伝統音楽としての太鼓のほか、新たに創作太鼓が加わり、音楽の一分野として確立されている。