Arai Tatsuya
1982年 東京都生まれ
幼い頃、祭りでつけたお面に強い興味を抱く。
6歳の頃、面打ちの大家・長澤 氏春さん(無形文化財選定保存技術保持者)との出会いをきっかけに、本格的に面を打つようになり、その後、長澤さんに師事する。
そして、22歳の時、「新作能面公募展」に出品した「 万媚 」が高い評価を受け、「文部科学大臣賞奨励賞」を史上最年少で受賞する快挙を成し遂げた。
お祭りで被ったお面に興味を抱いたのが、そもそものきっかけです。
周りの子どもたちと違って、ヒーロー物のキャラクターより、おかめやひょっとこのお面を買ってもらって喜んでいましたね。
そして、6歳の時に、長澤さんの個展で、能面を食い入るように見つめていたらしいんです。
そうしたら、先生が僕に関心を持ってくださいました。
そこが僕の面打師としての人生のスタートですね。
面打師としての仕事は、師匠の仕事場の様子や姿を見ながら学びました。
学校で教わるように、手取り足取り全部を教わるわけではないので、より深く身についたように感じます。
古い、良いものから学んだことを尊重し、自分なりの感性や解釈を創作に活かす。
いずれは、そんな面打ちができる職人になりたいと思っています。
「孤高の天才」――新井さんにはそんな言葉が似合います。
天才だなんて、と謙虚な彼は言いますが、この年齢で自分の面が実際に能の舞台で使われるのは、本当に凄いことです。
もちろん努力なくしては成し遂げられないこと。新井さんの部屋には過去に作られたいくつもの木彫りの像があり、その努力を物語っていました。
落ち着いた性格で、常に物事を冷静な目で見る新井さん。
自分の作った面が使われた舞台を見た彼は、「まだまだ勉強しなければ」と自分を厳しく評しました。
この言葉に、これから先どこまでその才能を伸ばしていくのだろう、と期待を感じてなりません。
面には、能で使う「能面」、狂言で使う「狂言面」の他、 神楽 で使われる「神楽面」などがあり、それぞれ特徴が異なる。
「能面」は一見無表情なようでありながら、無限の表情があると言われている。それは、ちょっとした面の動きや光の具合などで、喜びや悲しみ、また怒りや恨み、妖艶さなどを生み出すことができるからである。
面打師は様々な感情を表現すべく、常に面の見方を変え、見え方を意識しながら、面を打つ。