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象眼師ぞうがんし
伊藤 恵美子

Ito Emiko
1981年 熊本県生まれ

地元・熊本県の伝統工芸である肥後象眼に魅了され、20代初めに肥後象眼の道に進んだ。

肥後象眼を学ぶ中で、スペイン・トレドの伝統工芸である象眼の技法が、肥後象眼とルーツが同じであることを知り、トレドに留学してスペイン象眼の技法も習得。2つの伝統技法を用いて制作した作品は「第40回 伝統工芸日本金工展」で新人賞を受賞した。

現在も肥後象眼の重厚感とスペイン象眼の華やかさを兼ね備えた作品を作り続けている。

鳥と花のモチーフのペンダントを布目象眼で制作する。
布目切りで溝を施した鉄の板に、厚さ0.08ミリの金の糸をはめ込み模様を描く。
これを平面のたがねで叩きしめていく。

伊藤 恵美子さん インタビュー
肥後象眼とスペイン象眼を学ぼうと思ったきっかけは?

元々は、雑貨店に勤務し、ハンドメイドでアクセサリーを作っていましたが、せっかく物を作って形にするのであれば自分にしかできない作品を作りたいと思ったのがきっかけです。

そんなとき、熊本県伝統工芸館による、肥後象眼の「伝統工芸後継者育成事業」の募集を知り、参加しました。

最初は、肥後象眼の技術を学んでアクセサリー制作に生かしたいと思っていましたが、肥後象眼の巨匠・白木光虎氏に師事して学ぶうちに、いつしか没頭していました。やればやるほど技術の深さを知り、簡単な気持ちでやれるものではないと気づきました。

飾彫かざりぼりというスペイン象眼の技法を使って躍動感を出す。
数百種類のたがねを使い分け、金の上から模様を彫っていく。

スペイン象眼を学びたいと思ったのは、他に伝統工芸として象眼を行っている場所があるか調べたことからです。

日本以外はスペインでした。すごく華やかで、肥後象眼と同じ、鉄に金と銀の装飾を施すのに、どうして表現が異なるんだろうと思ったのがきっかけです。

今後の目標、展望などありますか?

難しいのですが、建築に関わるもの、壁に装飾するオブジェなどの大きなもので表現できたら面白いと思っています。
象眼というと、身に付けるサイズ感の装飾品が多いので、大きいサイズで表現する作品を作ってみたい。それができれば、もっと身近に象眼を感じてもらえるのではないかと思っています。

肥後ひごつばに用いられていた透彫すかしぼりを施した後、
秘伝の錆液を塗り、錆出し、錆止めをおこなう。
重厚感のある黒錆は、耐久性や金の美しさを際立たせる。

例えば、幼稚園などに象眼のオブジェがあれば、小さい頃から伝統工芸に触れられる。

伝統工芸があるとか、そういう価値観があると知って、触れて育つだけでも、世界が変わるのではないかと思っています。

肥後象眼の場合は、使っているのが純金などになるので、子どもが触る機会がなかなかないと思うんです。
だから、多くの人が目にして、気軽に触ることができる作品を作ってみたいです。

取材を終えて

とにかくエネルギーに満ちている人!という印象でした。

取材にお邪魔したのは、個展の真っ最中。一週間、たったひとりで朝から夕方まで在廊し、作品制作をしながら接客を行い、帰宅してからも深夜まで作品制作。過密スケジュールの中にありながらも、象眼を制作しているときは、とても楽しそうでした。そして驚いたのは、彼女のデザインの多様さです。

いろんな人に象眼を知ってほしいと願う、彼女の気持ちが溢れている気がしました。

象嵌

象眼ぞうがん(象嵌)

工芸における装飾技法のひとつ。元となる素材に異なる素材を嵌め込む技術をいう。

金属・陶磁・木など、様々な素地に用いられるが、金属の素材(素地)に金や銀などを嵌め込む象眼は「金工象眼」という。金工象眼には、布目象眼・糸象眼・平象眼・高肉象眼・切嵌象眼など、さまざまな技術がある。

肥後象眼とスペイン象眼は、シリアのダマスカスで発祥した金工象眼から派生したものと考えられており、どちらも布目象眼の技術を用いている。

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