Nakata Yohei
1982年 香川県生まれ
祖父の代より80年以上、香川漆器の製作を手掛けている「中田漆木」で生まれ育つ。
高松工芸高校のデザイン科を卒業。
「地元の香川漆器に貢献したい」という気持ちから、跡を継ぐことを決意。職人の道を歩みながら「香川県漆芸研究所」で技術を磨いた。
現在はワークショップなども積極的に開催し、香川漆器の普及にも尽力している。
漆の仕事はワクワクの連続です。先人達の作品を見るだけでワクワクします。繊細な技、鮮やかな色使い、丁寧な仕事、どれをとっても刺激を受けます。
漆は自然の塗料のため扱いはとても難しく、天候、気温、湿度、同じ条件はないので、常に漆と会話をしながら作品作りに挑んでいます。
漆の難しさは、経験を積めば積むほどわかるようになりました。だからこそ一生勉強ですし、少しでも多くの作品に携わりたいです。
手が動かなくなるまで、本気で漆と向き合っていきたいと思います。
香川漆器は五つの技法「 蒟醤 、 存清 、 彫漆 、 後藤塗 、 象谷塗 」が国の伝統的工芸品に指定され、また、漆に顔料を混ぜた鮮やかな「 色漆 」が特徴です。
それらの技法や多色な漆を駆使して、決まり事などに縛られず自由な発想で漆器を作ることができます。技術を守り、受け継ぐことだけが伝統ではないと思います。新しいこと、革新的な作品を生み出す攻めの姿勢があってこそ伝統は守られると思っています。
高松には後継者育成施設である「香川県漆芸研究所」があります。現在、後輩たちが毎日汗を流し技術を学んでいます。彼らもまた、これまでになかった革新的な作品を生み出し、それが未来へつながる…。
僕たちのような若い世代が香川の漆器を盛り上げ、伝統をつなげていければと思っています。
中田さんが作った漆器のコーヒーカップでコーヒーを飲んだ。
驚くほど軽く、熱さを感じない。そして、飲み口の口当たりが優しくとても心地よい。
漆器の概念が変わってしまった。「漆器」への先入観や固定観念を見直す良い機会になった。
中田さんは漆器の魅力を多くの人に伝えたいと真剣な眼差しで語っていた。
漆器で飲むコーヒー。
ゆったりとした時間が流れ、仕事の忙しさをほんのひととき忘れさせてくれた。
香川の漆芸は、江戸時代に高松藩主の庇護のもとに発展、多くの名工を輩出。
江戸時代後期、一人の漆職人・ 玉楮 象谷 が中国や東南アジア伝来の漆芸技法を研究し、日本古来の技法と融合させ独自の技法を開発。現在の香川漆器の礎を築いた。
「 蒟醤 」、「 存清 」、「 彫漆 」、「 後藤塗 」、「 象谷塗 」の五つの技法が国の伝統的工芸品に指定されている。
香川独自の漆技法で普段使いの漆器から美術工芸品に至るまで多種多様な作品が作られている。