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茶筒職人
石場 亮輔

Ishiba Ryosuke
1985年 愛知県生まれ

地元、名古屋の大学でプログラマーを目指していたが、手に職をつけたいと、京都伝統工芸大学校に入学。
「金属工芸」を専攻し、将来は、身につけた技術で海外を目指したいと思うようになった。

そんな時、たまたま目にした雑誌でイタリア・ミラノサローネに出展されていた開化堂の茶筒を目にした。

世界に認められた茶筒が気になり、週に一度、開化堂でのアルバイトを始め、卒業と同時に迷うことなく開化堂に就職。

140年前から変わらない使いやすさや高い気密性を守るべく、一つひとつの工程に真摯に取り組み、素材の金属と向き合う日々を送っている。

茶筒は二重構造になっている。蓋と内側の筒に絶妙な隙間を設けることで、
開け閉めのしやすさと気密性という相反するものを両立させている。

石場 亮輔さん インタビュー
茶筒職人を志したきっかけは?

手に職をつけようと思い、京都伝統工芸大学校で「金属工芸」を学びました。
そんな時、たまたま目にした雑誌で開化堂の茶筒を見たんです。どうやって作っているのか知りたくなりました。

開化堂の茶筒はシンプルです。金属を知れば知るほど、シンプルであればあるほど、高度な技術が必要だと痛感しています。
開化堂の茶筒作りは、茶筒だけの特別な技術が確立され、創業当時からデザインも製法も完成されています。例えば加飾をすると、それが蛇足になってしまう。
すでに完成されているものの品質は落とさずに、よりお客様が使いやすいようにするにはどうすればいいのか?と、試行錯誤の毎日です。

若い世代は「お茶はペットボトルで飲む」とか「お茶の淹れ方を知らない」という人もいて、なかなか手に取ってもらえません。でも、より良いものを作れば興味を持ってもらえると思います。そんな茶筒を作ってみたいと思います。

気密性に大きく影響するハンダ付け。
コテの温度を調整しながらハンダをムラなく付けていく。

開化堂 五代目
八木 聖二さん インタビュー

伝統を守ることとは?

同じことを毎日同じようにできるのが良い職人。職人は良いものを作って当たり前。一つひとつ手間を惜しまず作ってきたから今の開化堂があります。

私たちは、伝統を守りながら、一代ごとに新しい要素を加え、時代に合わせたもの作りをしています。
開化堂の「開化」は文明開化なんです。新しいことをやってこそ伝統が守られると思います。

私たちの元へ使い込まれた茶筒が修理に持ち込まれます。その茶筒を見れば使い手の人柄と茶筒の歴史がわかります。茶筒の中に使い手の思い出が詰まっているのが開化堂の茶筒なんですね。その思い出をしっかりと次の世代に引き継げるように修理をしています。
良いものを当たり前に作っていけば、それが、いつしか伝統に繋がっていくんです。

石場 亮輔さん
茶筒職人
石場 亮輔さん
八木 隆裕さん
開化堂 六代目
八木 隆裕さん
八木 聖二さん
開化堂 五代目
八木 聖二さん

開化堂 六代目
八木 隆裕さん インタビュー

開化堂の茶筒の特徴とは?

開化堂の茶筒は、140年前の創業以来、同じ技法、同じ大きさで作られています。

蓋の重みでゆっくり閉まるのは、特徴の1つに過ぎません。それを目指して作っているのではないんですね。
開け閉めしやすいことと、茶葉が長持ちすることは正反対。茶葉を長持ちさせたければ蓋が開かないものが一番。でも、なかなか開かないものは使い勝手が悪い。相反する2つのバランスを取った結果、副産物的に生まれたものなんです。
その製法は、初代が考えたもので、よくこれを考えたと感心します。

現在、茶葉以外、例えばパスタやコーヒーなどを入れる容器としても世界で愛用されています。でもそれは、木に例えるならば、枝葉の部分に過ぎません。幹の部分に茶筒の歴史や品質があるからこそなんです。

開化堂の原点は、良い茶筒を作り続けること。親子三代、100年使えるもの作りをしていきたいと思います。

取材を終えて

「職人は茶筒を作って終わり。あとはお客様が茶筒を育てていくんです」そう石場さんは教えてくれました。

実際に何年も使い込まれた茶筒は、使い方、使う人によって、風合いが変わります。
そして、見た目の違い以上に驚かされたのが、蓋の開け閉めです。新品も確かに滑らかですが、使い込んだものは、すっと閉まる感覚が格段に違います。金属なのに、まるで絹のような滑らかさ。

「自分の作った茶筒が、誰かの人生とともに歩んでくれたらうれしいです」そう語る石場さんは、黙々と金属に向き合いながら100年先の未来を見据えていました。

開化堂の茶筒

開化堂の茶筒

開化堂の創業は明治8年(1875年)。日本で一番古い歴史をもつとされる手作り茶筒の老舗。文明開化の時代、英国から輸入したブリキを使い、それまでにない茶筒の草分けとして創業。
以来、一貫した手づくりで、一世紀を過ぎた今もなお、初代からの手法を守り続けている。

蓋を茶筒の口に合わせるとすっと閉まる精密さは、手づくりならではのもの。使い込むほどに深い風合いや色艶が増し、材料の本来の持ち味を楽しむことができる。

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