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加賀かがぬい職人
横山 実希

Yokoyama Miki
1995年 石川県生まれ

加賀繍工房「加賀繍IMAI」の四代目 横山佐知子の長女として生まれる。
大学卒業後、一度は一般企業に就職するが、工房に入り技術や伝統を受け継ぐ道を選んだ。
工房を開いた高祖父の今井助太郎は昭和天皇即位の際、加賀繍職人を集め、幅1m38cm、高さ2m29cmの巨大な壁掛け二幅を製作し献上。母で師匠の横山佐知子は海外のハイブランドとコラボレーション商品を制作した。 修業を始めて3年。代々の功績がプレッシャーになることもあるが「新しい風を吹かせ、より一層加賀繍に親しみをもってもらいたい」と日々研鑽を積んでいる。

繊細で多彩な表現が特色の加賀繍。
15にも及ぶ技法を駆使し、高度な技術と長い時間をかけて美しい刺繍を生み出している。

横山 実希さん インタビュー
加賀繍の魅力は?

機械で一気に縫うものより繊細な表現ができることが商品としての魅力です。
また、職人をやっていて良かったと思うのは、やはりひと針ひと針コツコツと作業を進めていくものなので、縫い終わったときの達成感がたまらないですね。
縫うのも大事なんですが縫う前にデザインを考え、色や太さを見て糸を選んで、その糸を一回一回縒っていく工程もあるので、作品一点一点それぞれに思い入れがあります。
お客様が手に取ったときに「職人の真心が伝わるといいな」と思います。

加賀繍では真っ直ぐな平糸を何本か組み合わせねじってを縒りをかけてから使う。
縒りの方法で刺繍の表現が変わる、針を入れる前の重要な工程。
いい作品になるように思いを込めて針を刺してゆく。

加賀繍職人を目指して

家業ですから子供の頃は「ひいおばあちゃんたちがやってる仕事」という感覚でしたが、大学や会社で実家の話題になったときに「うちは加賀繍の職人です」と言ったらすごい驚かれ、代々守っているものの凄さを、家を離れて初めて知りました。
修業を始めて3年経ちできることは増えましたけど、今回初めて帯を縫ってみて縫う面積が広くなり体力的にも辛かったです。また、苦手な縫い方を他の布で何度も練習したり、納得いかなくて縫い直したりして時間がかかってしまいました。
母のように早く、正確な作業できるようになりたいですね。

今後の目標は?

ひいおばあちゃんの作品を見ると、鳥や蝶などの生き物が立体的で本当にリアルなんです。
私が真似して縫っても平面的になってしまうので、技術面だけでなく色の使い方や、美術的な勉強も必要なんだと思います。
私は加賀繍を多くの人に知ってもらいたいし、手に取ってもらいたいと思うので、加賀繍を広める活動を積極的にしていきたいです。
そして、初代の助太郎が手がけた壁掛けのような刺繍作家としてのチャレンジもして、一生に一度、何年もかけて作るような人生の集大成みたいな作品を作って、後世に語り継がれるような職人になりたいです。

横山 実希さん
加賀繍職人
横山 実希さん
横山佐知子さん
加賀繍IMAI 4代目
横山 佐知子さん

加賀繍IMAI 4代目
横山 佐知子さんインタビュー

実希が加賀繍を継ぐとは思っていなくて、自分から言ってくれたときは本当に嬉しかったです。 子供の時から見ていたのもあるのか基礎的なことは教えなくてもできましたので、教える側としてはあまり苦労はしませんでしたね。ただ、この仕事はある日突然うまくなることは絶対にないので、毎日1時間、30分でも良いので針に触ること。そうしているうちに少しずつ上達していくと思います。 刺繍は時間がかかる作業ですが、ギリギリの納期での依頼が来ることは少なくないんです。焦りや苛立ちが縫い目に出ると出来が荒くなってしまうんです。そこは経験を積んで、心の余裕を持つことで抑えられるところなので、人間的な成長も必要になってきます。 今回、実希には帯の課題を出しました。やはり刺繍は面積のあるものでその魅力が引き出されますし、職人の力も試されます。是非この課題をやり切って職人として成長してほしいですし、また自信もつけてほしいと思っています。

取材を終えて

加賀繍を初めて見た時、その繊細さと美しさに圧倒された。同行したカメラマンもアップにすればするほどその凄さがわかると言っていた。しかし、その美しさの裏側にはつらい作業と途方もなく長い時間が必要だということも知った。
実希さんはそんな事を百も承知で加賀繍に飛び込んだ。
彼女はオシャレにも敏感な今どきの女性。しかしそんな見た目とは裏腹に芯の強さ、加賀繍への熱い想いを持っているように感じた。
集中力を妨げる無粋な問いにも真摯に答えてくれた。それはきっと加賀繍をよりよく知ってもらいたいという気持ちがあったからなのだろう。
実希さんの夢は初代・助太郎さん達が縫ったような刺繍壁掛けを作ることだという。実希さんならきっとできるに違いない。その夢の実現を応援したい。

加賀繍

加賀繍

加賀繍は、室町時代初期に加賀地方への仏教の布教とともに、主に仏前の打敷、僧侶の袈裟など荘厳飾りとして伝えられた。
江戸時代には将軍や藩主の陣羽織、持ち物の装飾、また女性の婚礼用の着物などに用いられ、加賀藩の庇護の元、大きく発展した。
糸を何重にも重ねて縫う特徴的な技法には、立体的に見せる「肉入れ繍」や、絹糸の色を変えながらグラデーションをつけていく「ぼかし繍」がある。
色あざやかな絹の糸に、金糸、銀糸の輝きが使用され、熟練の職人技によってひと針ひと針、丁寧に縫いあげて描き出される。

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