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美濃手漉き和紙職人
千田 崇統

Senda Takanori
1983年 岐阜県生まれ

大学時代、クラブカルチャーに関心を持ち、卒業後はワーキングホリデーを利用しロンドンへ渡る。
しかし、都会での暮らしの中で民族文化に興味を覚え、今度は南米各地を旅する。ペルーアマゾンで出会ったシピボ族の生活に触れ「自分も日本でこう生きたい」と岐阜に戻り、畑を耕し、自然の恵みに感謝する生き方を始めた。

「美濃和紙の里会館」の紙漉き体験工房で手漉きの和紙と出会う。その時の縁で師匠 市原 達雄さんが後継者を探していることを知り、弟子入り。3年間師匠の下で修行し、6年前に工房を引き継ぐ。
こうぞの栽培から携わり、美濃特有の白く美しい和紙と、創造性を掻き立てられるような和紙の製作を手がけている。

美濃の流し漉き。
縦揺りと横揺りを交互に行う事で、繊維が整然と、しかも強く絡む。
出来上がった和紙は圧倒的な透明感で、光を優しく美しく透す。

千田 崇統さん インタビュー
手漉き和紙の面白いところは?

自分の心の状態が紙に出るので、そこは面白くもあり難しくもあります。白くて無地の紙であればある程、それが如実に現れてきます。
集中できていない時の紙は、干す時から分かるんです。干して透かして選別している時にムラになったりとか、傷が入ったりとか、不思議とスカッとしない紙になりますね。
夫婦喧嘩した時も紙に出るので(笑)そういうのが面白い。人間と紙が繋がっているという感じがしますね。精神が穏やかな人はいい紙を漉くんだろうなと思うので、自分もそういう穏やかな人であるべきなんでしょうけど…なかなか難しいですね。
本美濃紙保存会会長 澤村 正さんが「身体で習得して心で漉く」ということをよく言ってらっしゃるんです。なるほどと思います。

千田 崇統さん
弟子
千田 崇統さん
市原 達雄さん
師匠
市原 達雄さん

千田さんにとって
美濃和紙とは?

人と自然の結晶みたいな、そんなイメージですね。
原料自体で表情が変わったりしますし。同じ職人が同じ漉き方をしても、同じところで漉いても表情が変わるので。本当に漉き手と自然の織りなす結晶だと思います。

今後の目標は?

海外の人に和紙の良さを広げていきたいです。仕事で海外へ行く機会もあるので、もっと海外の方と触れ合って和紙の良さを伝えられたらと思いますね。
美濃和紙は、知るともっと足を踏み入れたくなる魅力的なものだと思うので、この良さを知ってもらえれば自然に広まると思います。その為にも知ってもらう働きができたらいいなと思います。

取材を終えて

「すごく真面目で一生懸命」そんな言葉がピッタリ当てはまる千田さん。
早朝からテキパキと工房で仕事に向かう姿が印象に残ります。丁寧でスピード感のある仕事ぶりに、こちらも緊張感が走りました。
趣味のバンドの練習にお邪魔した時はとても楽しそうで、ゆったりとした千田さんを見ることもできました。素晴らしい曲を聴かせていただきありがとうございました。

いつも自然体で周りの皆さんに愛されているのがとても伝わる取材でした。奥様の薫子さん、スタッフの由季さんも、いつも一生懸命仕事に向かう姿が印象的で、素敵な時間の流れる工房だと思いました。
紙漉きの仕事は、「山々に抱かれて自然の恵みに感謝する営み」そう歌う千田さんは、紙と真摯に向き合ってらっしゃるんだなと感じました。

美濃和紙

美濃和紙

現存する最古の和紙が正倉院にひっそりと残されている。
大宝2年(702年)御野国みのこく加毛郡かもぐん半布里はにゅうり戸籍。美濃で漉かれた美濃の戸籍である。1300年以上たった今も美濃の紙は現代のものと同じように柔らかみのある独特の質感を保っている。
楮から不純物を取り除く「ちりとり」を徹底的に行い、縦揺りに横揺りを加えた複雑な「流し漉き」で漉き上がった美濃紙は、白く美しい地合いを持ち、陽に透かすと繊維が均一に絡み圧倒的な透明感を魅せる。中でも最高級「本美濃紙」は原料を楮のみとし、伝統的な製法と道具を使用し色沢などの特質を保持したものである。本美濃紙の手漉き技術は国の重要無形文化財に指定されており、2014年に「和紙 日本の手漉き和紙技術」としてユネスコ無形文化遺産に登録された。

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