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#136

栃木県 ユネスコ無形文化遺産登録SP
伝統建築工匠の技1―

大森 憲志
安藤 由香梨

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日光東照宮修復 漆塗
大森 憲志

Omori Kenjii
1986年 栃木県生まれ

日光東照宮修復 彩色
安藤 由香梨

Ando Yukari
1981年 栃木県生まれ

日光東照宮修復 漆塗
大森 憲志

Omori Kenjii
1986年 栃木県生まれ

日光東照宮修復 彩色
安藤 由香梨

Ando Yukari
1981年 栃木県生まれ

2020年12月、日本の伝統建築やその修理に関わる17の技術が「伝統建築工匠の技」としてユネスコ無形文化遺産に登録された。

番組では長きに渡り、日本の伝統技術を受け継ぐ若者たちを応援してきた。その中に、「伝統建築工匠の技」に登録された技術を修行する若者たちの姿があった。

今回は、ユネスコ無形文化遺産登録スペシャル第一弾として、2010年に放送した日光東照宮修復 漆塗・彩色の若き二人の職人を紹介。
前回の放送内容に加え、当時伝えきれなかったシーンを盛り込み、受け継がれていく修復の技と現在の活躍をお伝えする。

漆を塗る下準備として古い塗装を落とし、紙やすりで研ぐ。さらに彫刻刀で傷の周りを削っていく。
風雨にさらされて出来た傷から水が入って彫刻が腐るのを防ぐ。
彫刻を長持ちさせるために必要な作業だという。

【日光東照宮修復 漆塗】
大森 憲志さん

当時(2010年)に比べ成長したと思うところは?

現在は、以前取材を受けた時と同様に東照宮の透塀すきべいを施工しています。 透塀は当時全範囲を修理したわけではなく、その時修理しなかった範囲を今やっています。当時と比べると漆塗の技能や作業のスピード・クオリティ全般的に向上していると思います。また、当時よりも古塗膜を見るようになりました。漠然と修理を進めていくわけではなく、前回の修理を見て数十年経ったら漆塗膜はどうなるのか、この部分はどうしてこう劣化しているのかと考えるようになりました。

今後どのような職人になりたいですか?

以前と職人としての目標は変わりません。一人前の職人として、その時その時の状況に応じた判断や見極めが出来る職人になりたいと思っています。もちろん自分勝手に判断して進めるわけでは無いので、自分で考えてから上司や先輩に聞き、自己の判断が正しかったかどうかを見極め、勉強しながら仕事を進められるようにと思っています。 また、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことは誇らしい事であり、その名に恥じぬようプレッシャーに感じる部分でもあり、より一層の努力が必要だと感じています。

漆の上に金箔を押す最終工程。金箔を立体的なものに押すのは十分な経験が必要だ。
終わった箇所を刷毛で擦ると美しい金の彫刻が現れる。

修復技術を後輩たちに伝えていくことについて

伝えようと意識してあれこれ教えすぎるよりも、普段からよく話をして何気ないところからヒントなどが伝えられたらと考えています。
受け継がれてきた修理技術は伝えなければいけませんが、一方道具の調整等その人個人個人の感性による部分などはその人なりで良いのではないかと思います。もちろん聞かれたら自分のやり方など答えようと思っています。
何より普段からのコミュニケーションが大切だと感じます。

金箔の上から羽の一枚一枚に郡下ぐんしたと呼ばれる青い絵具を塗り、境目をぼかす。
水の流れる様子が見事に表現された。

伝統建築工匠の技:
木造建造物を受け継ぐための伝統技術とは

木・草・土など自然素材を建築空間に生かす知恵、周期的な保存修理を見据えた材料の採取や再利用、健全な建築当初の部材とやむを得ず取り替える部材との調和や一体化を実現する高度な木工・屋根葺・左官・装飾・畳など建築遺産とともに古代から途絶えることなく伝統を受け継ぎながら、工夫を重ねて発展してきた伝統建築技術。 日光社寺文化財保存会は、17件の国の選定保存技術のうち「建造物漆塗」「建造物彩色」の技術で選ばれた。

井波彫刻

日光東照宮修復 漆塗・彩色

江戸時代初期の建築・美術・工芸の粋を集めた建造物と称される「日光東照宮」。 その豪壮華麗な姿を維持するため、江戸時代は20年に1度、明治以降は約50年に1度大規模な修復作業が行われており、修復作業を「公益財団法人 日光社寺文化財保存会」が担い、定期的に修理を進めている。修復作業は「漆塗」と「彩色」の二つの部門に分かれ、それぞれを専門の職人が請け負う。 日光東照宮の建造物の表面には雨風に強く、防腐効果も高い漆が塗られている。それを塗り直し、表面を再び強固にすることが漆塗の役割である。 煌びやかな彩色は、400年前と同じ手法を継承し天然の〝岩絵の具〟と〝金〟で描かれ独特の極彩色を彩色部門の職人たちにより再現され修復されている。