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八王子車人形 人形遣い
西川 柳玉

Nishikawa Ryugyoku
1996年 東京都生まれ

八王子車人形の家元・5代目西川古柳の元に生まれる。
車人形にさほど興味はなく、父親の古柳氏から「海外の人形劇とのコラボレーションがあるから手伝ってみないか」と声をかけられたことがきっかけで、人形劇の世界に足を踏み入れる。
2016年に正式に弟子入りし、5代目西川柳玉を襲名した。
その後、人形遣いの基礎を学ぶため、およそ1年間、兵庫県の淡路人形座で修行を積み、弟子入りから5年を経た現在、10代、20代の若手座員と共に切磋琢磨の日々を送っている。

一体の人形を一人で操る車人形。
一人で操ることで動きに制限がでてしまうため、人形に様々な工夫が凝らされている。

西川 柳玉さん インタビュー
車人形を操ることの魅力は?

地面に直接立つことができるので、他の芸能との共演が可能なこと。古典芸能だけでなく、バレエなどのダンス演目ともコラボレーションすることができます。
海外の舞台で車人形でフラメンコを踊りましたが、終演後にスタンディングオベーションをいただけた時にとてもやりがいを感じました。
また、お客様をお見送りする際、直接感想を言っていただけるのもありがたいです。演じている時は夢中で、お客様の反応まで見ることができないので、言葉をいただけるのはとても嬉しいですし、励みにもなります。

人形の骨組みと衣装を合わせる「着付け」。
公演のたびに着付けを行うという。
伝統を守るためには、このような見えない部分こそが大事なのかもしれない。

新しい取り組みについて

舞台公演が一切なくなってしまった時に「YouTubeやSNSで車人形を発信しよう」と思いチャンネルを立ち上げました。
八王子車人形を八王子に住んでる人も知らないので「知ってもらいたい」という気持ちがずっとありました。ショートムービーを中心に、古典芸能に興味をもってもらうような動画作りを心がけています。
また、ご覧いただいている方からコメントをいただくこともあるのですが、特に海外の方からの質問が多く「この人形はどうやって動かしているんだ?」と聞かれるため、人形の動かし方の解説動画を出したりもしています。

今後の目標は?

父の古柳に遠く及ばない部分がたくさんあります。
技術的なこと以上に、役に入り切ることや、役を理解することは人生経験も必要なので、今は全てが人形遣いの勉強になると思っています。
まず、お客様の前に出た時に人形を違和感なく動かすことができること。それができた上で、役になりきって登場人物の感情を伝えられるようにレベルアップしていきたいです。
父の操る人形の手先の動きや頭の遣い方、音や間の取り方、とにかく全部見て勉強しようと思うのですが、そのたび「自分はまだまだ追いつけないな」と思います。

西川 柳玉さん
八王子車人形 人形遣い
西川 柳玉さん
5代目 西川 古柳さん
師匠
5代目 西川 古柳さん

師匠
5代目 西川 古柳さんインタビュー

柳玉は集中すると物凄いスピードで技術を身に付け、動きを形にしていきます。
新しいことにどんどんチャレンジして、柳玉が新しい芝居の形を作り出すことを期待しています。
今後は一座を引っ張っていく者として、チームをどう作っていくかも課題になってきます。芝居はチームプレイですから、良いチームを作らなければ良い芝居は作れません。
また、実力がなければ人は付いて来てくれません。小手先の技術ではなく芝居の「芯の部分」、例えば「このお姫様は何故悲しんでいるのか」をきちんと考え、人形からお客様に伝えるということです。
それには人生経験も必要ですから、様々な経験を積んで学んでいってほしいですね。

取材を終えて

西川柳玉さんにお会いしたとき、口数が少なくもの静かで、160年続く伝統を背負って立つには少々心もとなく感じられた。車人形を始めた動機もそう感じさせたのかもしれない。
伝統を受け継ぎ、続けていくためには『好き』が不可欠だ。
彼は車人形が本当に好きなのか?
しかし、その疑問は取材を通して見事に裏切られた。
今回、人と車人形の共演という難しい課題を柳玉さんはやってのけた。
家元は「芸は見て盗め」というスタンス。演技を手取り足取り教えることはない。
今回も稽古中の柳玉さんを黙して見ているだけだった。
そうした中で柳玉さんは黙々と鏡に向かい「どうしたら子供らしく見えるか」と苦心しながら稽古をしていた。
本番を無事に終え、家元も喜んでいるに違いない。

八王子車人形

八王子車人形

車人形は「ろくろ車」という、前に二個、後ろに一個の車輪がついた箱形の車に腰掛けて操る特殊な一人遣いの人形芝居。
ろくろ車の発明は、それまでにあった江戸系の三人遣いの人形芝居を合理化したもので、少人数の座員で簡易な舞台での公演を実現した。
人形の足が直接舞台を踏むので、他の芸能との共演や、力強い演技やリズミカルでテンポの速い演目を行うことも可能となった。
八王子の西川古柳座は、初代西川古柳や江戸の人形遣い吉田冠十郎、文楽の吉田文昇らの指導を受け、昭和五十六年には工夫を重ねて「新車人形」を考案した。また、技法のみならず、独自の用具なども考案し、新作の上演も行っている。

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